[ホールへ出てからそれなりの時間が過ぎていた。]
ごめんなさい、少し、疲れてしまいまして……
あちらで休んで参りますね。
[軽い疲労感を覚えたオーレリアは、夫にそう告げる。
「そうか」、と短い返事を聞いてから、彼にも頭を垂れ、ホールの隅にある長椅子へと歩を向けた。
サイモンとの会話はいつも短い。
オーレリアが何を訪ねても、一言か二言くらいしかサイモンは返してくれないのだ。
愛の言葉はおろか、賛美や労いなども聞かされた覚えはない。
所詮は政略結婚。己のように体が弱い以外に取り立ててなにもない、ぼうっとした女など愛想を尽かされても仕方がなかろう。
もっともサイモンに近しい人たちは、彼はシャイなだけだ、などと言うのだが……
オーレリアが真実を知る術はなく、不安ばかりに苛まれる毎日なのであった>>20]
(27) 2018/12/30(Sun) 14時半頃