[挨拶すら拒絶するような風情であった癖に、にべもなく発されたその言葉に、反感を覚えなかったといえば嘘になる。]
…行かなくていいって、なんか、あったの知ってるの。
[今度は、誰にともない問い掛けでなく、明確に檀を見据え声を掛けるが、その視線は紙面に落ちて、此方を見ることはけしてない>>69。
そのまま2人の視線は交わらず、居住まいの悪い沈黙に、近づいてくるのは車輪の音>>59。
訪れたワレンチナも施設の不穏を告げる。]
大変なって…朝から此処に居たから知らないよ。
呉羽さんどうかしたの。大きな声出すとか珍しいけど。
[また肉叢が何かしたのか、と口から出掛けた言葉を噤んだのは、此方の応えを待たず、本棚に向かう彼女の様子は、いつもより落ち着きがなく思えたからだ。
「大変な」事を知っていたかのような口ぶりの檀に、もう一度、幾ばく怪訝気な視線を戻す。
知っていて、核心を述べない彼女たちに]
一体何なの。
[苛立ちを表に出して、再度強請った。]*
(85) 2017/04/04(Tue) 23時半頃