[眠る初野の姿は、幾ばくか衣服も赤に塗れ、彼までも犠牲者かと、部屋に入った六嶋は一瞬考えたものだ。
しかし、呼吸に浅く上下する肩、まるで溢れる程の苺ジャムを乗せたトーストにかぶりついた様な口元、そして初野の身体の向こう―、見覚えのある修道服、小さく、今や六嶋よりも小さくなったかに見える、六川の身体は、寄り添う初野が、ただの同衾でないことを嫌というほど知らしめた。]
せん、せい…
[乾いた唇から、掠れきった声が漏れた、]
先生。
[一歩、部屋奥へ踏み込むと、足裏が柔らかいものを踏んだ。びくりと身を震わせて足元を見る。それはもうどこの部位とも判別つかない人の肉の残骸。
目を離したその先から、小さく身動ぐ気配がした>>39。
慌てて視線を引き戻せば、寝起きに空気を求めて大きく開かれた口腔。深淵の様な、地獄の様な、空虚のような…赤を過ぎて、ただそこに、まるでぽっかりと開いた暗闇のようにみえた。]
うわ、わ…わあああああああああ!!!!!!!!
[かってない程の叫び声が出た。それはまさしく恐怖だった。]
(41) 2017/04/08(Sat) 22時半頃